精神科の真実     


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(注)医薬品添付文書
 病院、診療所、薬局でも医薬品添付文書をくれないのですから、患者や消費者は添付文書を以下の医薬品医療機器総合機構のウェブサイトで入手するのが便利です。
http://www.info.pmda.go.jp/
index.html


 各製薬会社のウエブサイトでも医療関係者のリンク・ボタンをクリックすれば得られる。

 処方薬を服用するばあいには
必ず医薬品添付文書を読む習慣を付けることをお勧めします。
しかし精神治療薬の場合には、添付文書に書いてあることはミニマムであって、大事な事が抜けていたり、歪曲された情報が入っている可能性があることを心すべきことと思います。医薬品添付文書は政府が起草するものではなく、その薬を売る製薬会社が書くものです。医薬品添付文書は絶対的なものではありません。









































































































































 
 真実7   精神科医は患者の心の不調を治すのではなく、かえって患者に害をもたらし、苦しみを与えている。
    間違った思い込み7
精神科医は医師の国家資格を持っているので、患者の心の不調を治すことができる。また患者にとって有害で危険なことをするはずがない。

副作用を何とも思わない医師

 今まで見てきた真実1~6のゆえに真実7が成り立つことは明らかですが、ここではさらに問題を掘り下げていきます。

 以前ある都立総合病院の神経内科を筆者が受診した時のことです。医師は地方の国立大学医学部を卒業し、経験を積んだベテランの医師で、その病院の神経内科部長でした。診察中の筆者との会話の中で,話題が医薬品添付文書や薬の副作用になった時に、彼はこう言いました。「僕らは(添付文書に書いてある)副作用の項目なんて見ないよ。だって患者さんは何か主訴を持っていて、それを治して欲しくて医者の所に来たんだから、それを治すのが最優先課題だ。副作用なんか気にしていたら治療はできないよ。」 この医師が特別なのではなく、日本の多くの医師がこういう考えを持っているのでしょう。日本ではそれで済んでしまうのです。

 
神経内科というのは精神科や心療内科に極めて類似していて、薬を処方することが治療の中心です。薬を取り上げてしまったら、医師はほとんど医療行為はできません。薬を使えないと、医師は無力でお手上げなのです。 

 現在の医薬品添付文書に書いてある副作用情報は、特に精神治療薬の場合には極めて不十分です。新薬として承認する前の臨床試験4~8週間程度の副作用のデータを元にまとめた情報しか書いてありません。さらに言えば、副作用の中でも抑うつとかの精神神経症状上の副作用は、臨床試験では把握できないものばかりです。また精神神経症状上の副作用データは操作が容易にできます。製薬会社にとって有利な臨床結果を際立たせ、不利な結果は表に出ないように隠蔽したり、場合によっては改ざんもあり得るでしょう。従って精神治療薬の添付文書の副作用情報は極めて不完全なのですが、添付文書にある、その不完全な、副作用についてのミニマムな注意事項さえ守らなくてもいいのであれば、患者は救われません。

 アメリカの精神科専門誌を見ると、薬の広告が毎号必ず出ていますが、副作用についての説明が詳細に2~3頁に渡って書いてあります。日本の専門誌では副作用についての説明はほとんどありません。薬効の記述ばかりです。詳しく調べたことはありませんが、アメリカでは薬の広告を雑誌に出す場合には、副作用情報も細かく掲載することが法律的に義務付けられている筈です。日本にはそんな法規はないでしょう。只、アメリカの雑誌の広告には詳細な副作用情報が載っているとは言っても、極めて小さな字体で書いてあり、余りにも情報量が多すぎて医師も細かくは読んでいない事と思いますが、少なくとも副作用を意識して処方するという習慣が医師の間で醸成されています。医療裁判になった時に、製薬会社や医師が副作用に充分注意を払わなかったがどうかがアメリカでは争点になるということも要因の一つです。

 ひるがえって日本の医療裁判を見て見ると、製薬会社や医師の副作用に注意すべき義務について、日本の裁判所は製薬会社や医師に対して極めて寛大に見ていて、製薬会社や医師に副作用注意義務違反があったなどとはなかなか認めません。その結果、医師が副作用について極めてズサンで、いい加減な態度であっても誰にも罰せられることもなくそれで済んでしまうのです。
 欧米では医学生が医者になる前に、「ヒポクラテスの誓い」と呼ばれる宣誓を行うそうです。古代ギリシャ時代以来の伝統だそうですが、その宣誓の中には、患者に毒を盛ったり、患者に害を与えるようなことはしないという文言が入っているそうですが、日本ではそう言った宣誓が行われるという話を聞いたことがありません。倫理観の欠如した医師が大量に生み出されている風土があります。

 欧米では患者が処方箋薬を入手する場合には、薬局や医療機関は医薬品添付文書かあるいはそれに準ずるものを必ず患者に公布するように法律的に義務付けられています。日本には「くすりのしおり」と呼ばれるものがありますが、そこには極めて初歩的で幼稚な事しか書いていないので、副作用を正しく知ろうと思ったらとても不十分です。各製薬会社のウェブサイトを見ても、医療関係者以外は自社の薬の添付文書を見ないように誘導しています。「民百姓はよらしむべし、知らしむべからず」といった封建制度下での思想の影響がまだ日本には残っているのかも知れません。副作用の事を知ると患者が薬を怖がって飲んでくれなくなるという、製薬会社と医師の視点に立った制度です。インフォームド・コンセントなどときれいごとを言いながら、患者には十分な情報が提供されていないのです。

 薬の副作用があっても、行政も司法も製薬会社も医療も日本では誰も助けてくれません。患者は自の身を自ら守るしかないのです。
医薬品副作用被害救済制度なるものが日本にはありますが、精神薬の場合はこれが適用されることはないでしょう。医薬品添付文書の記載内容が真実を正確に反映していないこと、副作用と判定するために必要な臨床データの不足(製薬会社も医師も副作用の研究をほとんどやっていないため)等の理由により、有害事象は薬の副作用であるとの証明が極めて困難であるからです。また簡単に副作用と認めると、精神治療薬の場合は被害者への救済金の日本全体での合計金額がが余りにも大きくなりすぎて源資がすぐ枯渇するでしょう。

寿命の縮まる医療

 日本では精神科病院の8~9割は民間が経営している私立病院と言われていますが、それとは対極的にアメリカは公立の、特に州立の精神科病院が多い国です。そのアメリカの州立精神科病院の管理運営責任者が集まってできた全国レベルの協会があります。National Association of State Mental Health Program Directors(州メンタルヘルス・プログラム・ディレクターズ全国協会)という名で呼ばれています。この協会が各種の調査研究レポートを時々発行していますが、2006年に意味深長でショッキングなレポートを出しています。

 "Morbidity and Mortality in People with Serious Mental Illness"
   National Association of State Mental Health Program Directors (NASMHPD)
   Medical Directors Council, October 2006    英語原文


 重度精神障害者の疾病率と死亡率
   州メンタルヘルス・プログラム・ディレクター全国協会
   医務ディレクター協議会            日本語訳(抄訳

 州立の精神科病院に入院していたり、外来で通院治療を受けていた患者を対象にした調査研究です。” Seriously Mentally Ill - SMI” という英語をここでは「重度精神障害者」と訳しましたが、「深刻な精神障害を持つ人」と呼んでもいいかと思います。いずれにせよ、重症の入院患者だけではなく、外来患者も 調査対象に含まれています。レポートには”重度”(seriously)という言葉の定義は何も書いてありません。”重度”(seriously)という言葉を外して、ただ単に精神障害者といっても同じことと考えられます。

 アメリカには50州ありますが、州の事を英語ではState(国家)と言うくらいですから、各州の独立性が強く、中央で号令をかけて全国一斉に各州で共通の同じ調査をするというのが難しい国柄です。しかし 7つの州(アリゾナ、ミズーリ、オクラホマ、ロードアイランド、テキサス、ユタ、バーモント)が州立精神科病院の入院患者、外来患者の1997年~2000年期間の死亡統計データを提出しました。7州といってもアメリカの全人口は3億人。調査の対象となった患者数はかなりの数になる筈です。母集団として充分信頼できるものと言えます。、その提出されたデータを分析した結果が上記レポートにまとめられています。このレポートの最も重要な結論は、手短に言えば以下の一文に要約されます。

 「精神障害者と診断され、精神科の治療を受けた人は、(言い換えれば、向精神薬の投与を受けた人は)、そうではない一般の人と比べて、平均で25年早死にする」

 このレポートの表紙部分に、このレポートの編集者として4名の名前が載っていますが、名前の後に4名共全員MDという肩書が書いてありますが、MDとはdoctor of medicine またはmedical doctorの略で、医師の資格を持つ人のことです。恐らくは皆精神科医でしょう。従って精神科医の行う治療、すなわち薬物治療の悪さ加減については最小限の事しか書かず、薬以外の所に早死にする原因を探ろうと、皆で一生懸命ブレイン・ブレインストーミングをして、重複も恐れず原因を見つけようと努力したのですが、結局書きあがったレポートは歯切れの悪い、繰り返しの多い抽象論で、87頁に渡って煮え切らない議論が続いています。2006年にこのレポートが出ましたが、その後現在に至るまで、アメリカの精神障害者の死亡率には大きな変化はないと思われます。その理由は、早死にする最大の原因である薬剤の問題にについては何も手をつけていないからです。

 日本で同じような調査研究をやったとすれば、寿命が25年縮まる程度では済まないと思われます。日本ではアメリカその他の国と比較して多剤大量処方が広まっているからです。薬の副作用の結果、アメリカで早死にが増えているとすれば、多剤大量の日本では副作用がずっと強度に現れている筈です。結果として日本では精神障害者の寿命は30~40年縮まっていても何ら不思議ではありません。そんな真実が発覚するのを恐れて、精神科医も精神科病院もそんな調査研究をやりたがりません。あいまいのままにしておいた方が彼らには都合がいいのです。

 現在、精神科の治療を受けて、薬も飲んで、症状もある程度おさまっているので満足している。薬の悪口なんか聞きたくないという人がいるとすれば、それはその人が今、寛解状態にあるからで、決して病気が治った訳ではありません。寛解という薬の力を褒めたたえる効果を持つ言葉を精神科医は使うのが好きですが、寛解と治癒は違います。精神科の薬はすべて対症療法であって、根本療法や原因療法ではありません。薬を飲んでいる間、薬が力ずくで、症状を抑え込んでいる、鎮静化させているだけのことです。薬をやめたくない、あるいはやめられないとすれば、もうすでに依存や耐性が出来上がっていると考えるべきです。今はよくても長期的にはいずれは不都合が現れます。人間は年を取るごとに肝臓の力が衰え、薬を代謝する能力が衰え、薬の血中濃度が高まり、いずれは副作用が強く出てきます。精神科医はそんな先のことまで考えてはくれませんよ。薬は一生飲むものなどと平気で言います。古いことわざの「角を矯めて牛を殺す」です。薬を長期に渡って飲めば、今は良くても、結局自分の命を台無しにすることにつながると考えるべきです。

 上記レポートでは早死の主な危険因子として、「肥満」「糖尿病」「喫煙」が何度か上がっています。新規抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)の中には、肥満や糖尿病が副作用として発現する確率が極めて高いものがあることは精神科医は皆よく知っています。新規抗精神病薬を飲み始めてわずか1か月で20kg太ったといったような患者・服用者の話はしばしば耳にします。、現場で患者に絶えず接している精神科医がこれに気が付かない筈がありません。精神症状と違って、肥満は本人以外でもすぐ気が付くからです。

 しかし抗精神病薬が喫煙行動を誘発するということに気付いている精神科医はほとんどいないと思われます。また気付いていても知らん顔を決め込んでいます。精神科の教科書やどんな本にも書いてありません。しかし現実には統合失調症と診断を受け、抗精神病薬を服用する人の中で、喫煙する人の比率が異常に高いのです。上記アメリカのレポートでは統合失調症患者の喫煙率(グラフでは有病率との言葉が使われている。英文原文5ページ)は50~80%と一般人口と比べて極めて高い水準です。具体的な調査データはここで提示しませんが、一般人口の喫煙率がアメリカより高い日本では、筆者の見聞きする限り、統合失調症と診断を受けた人の80~90%くらいはタバコを吸っているのではないかという印象を持ちます。

 タバコをよく吸うのは統合失調症という病気そのもののせいではありません。今までの筆者の調べによると、統合失調症の患者に喫煙者が多い理由として、以下の理由を挙げることができます。

(1)抗精神病薬とタバコの薬物相互作用

タバコには強力な肝ミクロゾーム酵素の誘導作用があるため、喫煙は抗精神病薬の
血中濃度を下げることに繋がるとの記述が以下の文献にあります。

 「抗精神病薬の使い方」(251頁)
   監修 大月三郎(日本アクセル・シュプリンガー出版株式会社)平成8年4月30日
   (この項の執筆者:上島国利)

 肝ミクロゾーム酵素というのは具体的にはチトクローム(cytochrome)450ですが,チトクローム450の中でも、特にCYP1A2という薬物代謝酵素が喫煙により誘導され、抗精神病薬やその他の向精神薬の代謝が促進されます。代謝が進むと薬の血中濃度が下がり、薬の効果が減弱されます。

 「精神科薬物療法における嗜好品への留意点」
 精神科臨床サービス 2巻4号 2002年10月 星和書店

 統合失調症と診断された人は、ほぼ100%抗精神病薬を投与されます。タバコを吸う事によって抗精神病薬の血中濃度を下げれば、薬の不快な効果を相殺し、副作用を抑えることにつながります。タバコを吸う事は、体の自然な防衛反応なのです。抗精神病薬を服用している人は、特に服用量が多い場合には、単に強い意志だけではタバコをやめられないのです。抗精神病薬をやめない限り禁煙は難しいといえます。

 生物学的精神医療などと言って、薬の投与を正当化する一方で、薬物に起因する喫煙の生物学的原因については知らん顔するという精神科の欺瞞性がここでも現れています。

(2)タバコはドーパミンを放出する効果がある

おおざっぱにいうと抗精神病薬は、ドーパミンという脳内の神経伝達物質の受容体を遮断する事によって、ドーパミンの働きを抑える働きがあると考えられています。ドーパミン神経系が働きすぎると、幻覚、妄想などの症状が現れるので、ドーパミン神経系の働きを抑えてやれば、幻覚、妄想などの統合失調症の症状も抑えられるという仮説の上に抗精神病薬は成り立っています。 

 ところがドーパミンは報酬系の神経伝達物質でもあると考えられています。報酬系というのは、ネズミを使った実験から出て来た言葉です。ネズミが幸福感、満足感、喜び(報酬)を感じて行動している時にはドーパミンがたくさん放出され、ドーパミン神経系がよく働いていることが実験で確認されています。一方、タバコを吸った時に脳の中でドーパミン神経系が活性化している事も確認されています。

抗精神病薬によってドーパミン神経系の働きが抑えられ不快に感じていた人が、タバコを吸うことによってドーパミン神経系の働きがより活発になり、不快感が取り除かれます。喫煙によってよりいい気分になり、頭がすっきりする効果があると考えられます。統合失調症という病気のゆえにタバコを吸いたくなるのではなく、統合失調症と診断されて、抗精神病薬を服用しているがゆえにタバコが吸いたくなってしまうのです。

   「脳内麻薬 - 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体」(53~54頁)
  著 中野信子  幻冬舎 2014年1月30日

 アメリカは公立である州立病院が精神科専門病院の中核を担っています。ですから不十分ながらここで紹介したような精神科患者の疾病率や死亡率についての調査研究が可能でした。日本ではどうでしょうか?アメリカとちょうど逆で、民間の、営利を目的とする私立病院が精神医療の90%を占めています。日本にも精神科専門病院の協会である日本精神科病院協会があるのですが、この協会がこんな調査研究をして、その結果を世間に公表するとはとても考えられません。そんなことをすれば患者が精神科病院に誰も来なくなり、病院の売り上げも利益も減少、いずれは廃業に至ります。構造的に、制度的に真実を隠蔽する体制が日本では出来上がっているのです。

 インフォームド・コンセントという言葉がよく使われています。患者に情報を充分与えて、患者はその情報を元に自分の受ける治療を選択する権利があるという、人権を大事にする考え方です。
精神科に診察に行って、薬を処方される時に、精神科医から、「これらの薬を飲み続けると寿命が平均で25年縮まるという調査研究がアメリカにはあります。それでもこういった薬を飲んで見ますか?」と精神科医は話さなくてはなりません。患者本人が話を理解できない精神状態であるなら、患者の家族から服薬についての了解を得る必要があります。

 統合失調症、うつ病その他の精神障害があると医師に診断されている場合には普通、生命保険に加入することはできません。保険会社は精神障害と診断され治療を受けている人の死亡率が一般人よりもずっと高いことをデータでつかんでいるからです。これは精神障害者に対する差別であると社会から批判されるのを恐れて、保険会社は余りおおっぴらには公言しませんが、事実です。保険会社が保険金や保険料の設定をする場合には各人口グループの死亡率等のデータに基づいて損得計算をします。これを保険数理計算と呼んでいますが、数理計算上、精神障害者は死亡率が高いので生命保険を売ってもペイしないのです。世間にはそんなことは言いませんが、生命保険会社は精神障害者の死亡率は一般人と比べてずっと高いという事をデータで知っているからです。

患者の自殺


 アメリカの州立精神科病院協会の上記レポートではさらっと言及しているだけで、詳しくは何も触れていないある問題があります。それは患者の自殺という問題です。自殺は患者全体の死亡率を高めることにつながる大きな要因の一つの筈ですが、自殺は本人の資質の問題であって、精神科の治療には関係ないと言わんがごときです。

 イギリスのウエールズ大学の精神科教授、デイビッド・ヒーリーが自殺について大変、意味深長な研究論文を発表しています。

 現在では、統合失調症と医師に診断されると、ほぼ100%確実に抗精神病薬が処方されます。統合失調症であると診断されていて、抗精神病薬を服用していない患者を見つける事は現代の日本では極めて困難です。従って、統合失調症の患者で抗精神病薬を服用していない患者群を対照群として、抗精神病薬を服用した場合と服用しなかった場合の患者への影響や違いを科学的に比較研究することは現在では極めて困難です。

 抗精神病薬第1号であるクロルプロマジンが世界で初めて統合失調症患者に対して使われたのは1952年のフランスでしたが(日本では1954年)、それ以前には当然ながら、統合失調症の患者であっても抗精神病薬を服用してはいませんでした。

 イギリスの北西ウエールズ地方のある精神科病院に、1952年以前に統合失調症で入院していた患者の自殺についての統計データがたまたま現在まで残っていました。そこに着目して、デービッド・ヒーリーらのグループが、その北西ウエールズの精神病院で、抗精神病薬の薬物治療を受けていなかった統合失調症患者の1875年から1924年までの自殺データと、現代の薬物治療を受けていた統合失調症患者の1994年から1998年までの自殺データを統計学的に比較研究しました。


 その研究結果が英国精神医学会誌(British Journal of Psychiatry)に2006年、発表されました。研究の結果判った事は、抗精神病薬等の薬物療法が使われている現代の統合失調症患者の自殺率は、薬物療法がまだなかった時代の北西ウエールズの精神病院に於ける統合失調症患者の20倍にも達するということでした。

  この論文の導入部分の日本語訳

  英語原文のpdfファイル
  "Lifetime suicide rates in treated schizophrenia:1875-1924 and 1994-1998 cohorts
  compared"
  D. Healy, M. Harris, R. Tranter, P. Cutting, R. Austin, G. Jones-Edwards and A.P. Roberts
  British Journal of Psychiatry (2006) , 188, 223-228   

  論文の元のサイト


 デービッド・ヒーリーらのこの研究は歴史的にも重大な意義があります。現代では、統合失調症であると診断されて、抗精神病薬を服用していない患者を多数集めるのは困難ですから、統合失調症であると診断されたのに拘わらず、抗精神病薬を服用していない患者群をプラセボ対照群とする臨床試験は困難です。臨床研究といっても、この研究は抗精神病薬の効能(ベネフィット)ではなく、自殺という副作用(リスク)を評価した臨床試験であったとも言えます。しかし、こういった研究はこれが最初で最後であって、今後行われることはないでしょう。

 日本でも統合失調症の患者には自殺が多いことが知られています。より正確に言うのであれば、統合失調症と医師に診断され、抗精神病薬やその他の向精神薬を服用していた患者に自殺が多いというべきです。

 内閣府の自殺統計である「平成25年中における自殺の内訳 付録1 年齢別、原因・動機別自殺者数」を見ると、年間の自殺者総数27、318名の内、うつ病自殺者5,832名、統合失調症1,265名となっていますが、これは警察が遺族から聞き取った情報を元に判断したものと考えられます。遺族が警察には統合失調症とは言わずに、うつ病と伝えていたいた例も数多く含まれていると推定できます。いずれにせよ、抗精神病薬は中枢神経抑制剤であって、気分も抑うつになるという副作用がありますから、うつ病自殺者の中にも抗精神病薬を服用していた人が数多くいたと推定できます。

 精神科医の中には、統合失調症と診断されていて自殺した人達は、幻覚・妄想にさいなまれて、例えば、「死ね、死ね!」という声が幻聴として聞こえてきて、それで自らの命を絶ったのだといった、まことしやかな説明をする人や、そう言わなくても心の中でそう信じたいと思っている人が多いようです。真実1と真実2を思い出して下さい。自殺直前、自殺者が心の中で何を思っていたか、何を感じていたかなど誰も判りません。本当は何も判らないのに、憶測と想像に基づいてもっともらしい事をいう人は信憑性がありません。抗精神病薬は重大な副作用として「抑うつ」を誘発するという事を知っておく必要があります。

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