精神科の真実     


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 真実5
  精神科の薬にはすべて依存性があり、薬をやめようと思っても身体上、精神神経上の辛い離脱症状、退薬症状、禁断症状が現れるので減薬や断薬は困難である。
    間違った思い込み5
精神科の薬は飲み始めても、やめたいと思えばいつでもやめられる。

すべての向精神薬には依存性がある

 
抗不安薬や睡眠薬としてよく使われているベンゾジアゼピン系の薬には依存性があるということにようやく気付いて、それを公言する精神科医や医師が日本でも少しは出てきました。しかし大方の精神科医や医師は、ベンゾジアゼピンの依存について知らないか、あるいは知っていても平気で患者にベンゾジアゼピン系の薬を長期間に渡って処方し続けています。日本の医療は世界でもトップクラスと、皆日本人は思っていたり、あるいは正確には、そう思わせられている訳ですが、ベンゾジアゼピンの依存について日本の医師が無知、無頓着であることこの上ありません。依存性の強い薬を出しておけば、薬をもらうために患者はいつまでも自分のところに診察に来てくれるだろうというそろばん勘定でやっている、道徳観の欠如した医師も中にはいるようです。

 ベンゾジアゼピンについては後ほどあらためて、それだけを取り上げた節を設けて詳しく見ていきます。ここではベンゾジアゼピンを含む向精神薬(精神治療薬)全体を眺めて、その依存性について述べてみたいと思います。

 物質依存の中でも私たちにとってもっとも馴染み深いのはアルコール依存症(アル中)です。酒に病みつきになって、飲まずにはいられなくなった状態のことですが、体に悪いと思って努力して酒を中断すると、こんどは「離脱症状」や「禁断症状」が現れて、アルコール依存から抜け出るのが極めて難しくなります。薬の依存の話なのに、なぜアルコール依存の話がここで出て来るのかと思うかもしれませんが、アルコール依存と薬物依存は極めて類似しているので、一番研究が進んでいるアルコール依存についてまず知ることが、薬への依存を知ることにもなるのです。

 NHK教育テレビの「きょうの健康」という番組で、かつて(2009年6月)アルコール依存症について取り上げたことがあります。この番組で専門家医師として登場したのは、国立病院機構 久里浜アルコール症センター副院長(
当時)の樋口進医師でした。彼は精神科医です。「きょうの健康」という番組は、放送に合わせて、印刷したテキス
トを発行して、書店で売っています。その時のテキストで樋口医師はアルコール依存の離脱症状(禁断症状につ
いて以下のように述べています。

 「離脱症状
 飲酒して酔うのは、アルコールの影響で脳の神経細胞の機能が変化するからです。健康な人の場合、この機能変化は一時的なもので、アルコールが抜ければ元に戻ります。
 ところが、連続飲酒によって体内にアルコールが入っている状態が続くと、神経細胞にとっては、それが通常の状態となってしまいます。その後、何らかの理由で体内にアルコールがない、あるいは量が少ない状態になると、神経細胞は、通常とは違うその状態に順応できなくなり、さまざまな不快な症状が起こるようになります。これが「離脱症状」で、「禁断症状」とも呼ばれます。
 よく見られる離脱症状には、「手が震える」「多量の汗をかく(特に寝汗)」「いらいらする、落ち着かない、不安に感じる」などがあります。「吐き気、嘔吐、下痢」などの消化器症状や、「頻脈」「高血圧」などが起こることもあります。夜には、寝汗に加えて「寝つきが悪い、夜中に目が覚める」などが起こり、眠れなくなります。
 また、「うつ状態」が起こったり、現実とは異なる声などが聞こえる「幻聴」や、ない物が見える「幻視」が起こることもあります。幻視では、虫や小さな動物などが見えたりします。」


 
                              NHK教育テレビ「きょうの健康」2009年6月号

「アルコール」という言葉を「向精神薬」に置き換えてもまったく同じことが言えます。「物質依存」と言った場合の「物質」(substance)にはアルコールも含まれます。
              
 アルコールと向精神薬とは違うのではないかといぶかる読者の方もいるかも知れません。しかし両者とも脳細胞の中に入って行き、脳細胞に働きかける物質であることには変わりありません。依存症のように、その物質が脳内に常時ある状態に慣れた時に、その物質をいきなり取り除かれると、脳細胞が異常な行動に出るという点ではアルコールと向精神薬はなんら違うところはありません。とくに、長い期間に渡って、大量にその物質が脳内に滞留していた時には、離脱症状はより激しいものとなるでしょう。

 ビール、ウイスキー、日本酒といったアルコールメーカーがアルコール依存症の研究をしたり、研究に金を出すということは考えられません。そんなことをしても会社の売り上げ増や利益増につながらないからです。

 同様に、抗精神病薬や抗うつ薬といった向精神薬のメーカーである製薬会社が、向精神薬の依存について研究をしたり、研究に金を出すことは考えられません。そんなことをしても会社の売り上げ増や利益増につながらないからです。向精神薬の依存性について、日本だけではなく、世界的に研究や論文が欠如しているのはそのためです。製薬会社に向精神薬の依存性について研究させたり、研究に金を出させたりすることはそもそも無理なのです。

 向精神薬の依存性について本当のことを患者が知れば、患者は薬を飲むのを躊躇するようになるでしょう。精神科医の仕事はやりにくくなります。統合失調症の患者に抗精神病薬は血圧や糖尿病の薬と同じで一生飲まなくてはならないなどということを患者に言いにくくなります。そこで、精神科医は向精神薬に依存性はない、依存性があるという証拠は何もないと言い張るのです。証拠がないのは当然です。日本だけではなく、世界中で、向精神薬を長期間投与した場合の依存についての研究がないのですから、論文も世間にありません。(欧米では、ベンゾジアゼピン系薬剤の依存についての研究はありますが、それとても十分なものではありません。)

 患者や患者の家族は依存性や離脱症状のことを知らされていませんから、薬を中断した後に異常な精神症状が出れば、原因が離脱症状にあるとは思わず、それは病気が悪化したか、再発したためと誤って思い込んでしまうのです。そこでまた薬を飲み始めることになります。

 また別のケースでは、薬を切り替えた時に離脱症状が起きているので、その薬には依存性があるということが確認できます。世の中に出回っている抗精神病薬の種類はたくさんあります。 今まで使っていた抗精神病薬で効果が出ない、あるいは副作用が顕著であると患者が訴えると、精神科医は今まで飲んでいた抗精神病薬をやめて、別の抗精神病薬に切り替えることを考えます。あるいは、製薬会社が新しい抗精神病薬を売り出したような場合に、製薬会社のプロモーションや宣伝攻勢に影響されたり、新薬に対する好奇心から、精神科医はその新しい抗精神病薬を患者に対して使って見ようという気になります。そこで患者には、今まで服用してきた抗精神病薬を中止させ、新薬を投与しようとするのですが、今まで飲んできた薬をそこで断薬すると、途端に離脱症状が現れ、結局新薬に切り替えることは断念し、今まで飲んできた薬に戻るといったことも臨床の場ではあるようです。精神科医は患者に薬を断薬させるという経験がありません。断薬からくる離脱症状について無知なのです。

 少し専門的になりますが、upregulation(上方調節)とdownregulation(下方調節)ということが脳細胞レベルで起きていて、それが離脱症状の発現につながっていると考えられます。抗精神病薬は、神経伝達物質ドーパミンが流れて行く時の受け皿であるドーパミン受容体を多かれ少なかれ遮断することによって、幻覚、妄想が抑えられ、薬効が現れると考えられています。しかし抗精神病薬によってドーパミン受容体が遮断されすぎると、人体はその不自然なバランスを補正し、前からあった均衡を取り戻そうとして、受容体の数がしばらくすると増えてしまうのです。これがupregulationです。こういった状況になった時に、急に抗精神病薬の服薬を中止すると、ドーパミン受容体での遮断が行われず、ドーパミンが大量に流れるようになり、その結果幻覚、妄想などのサイコーシス(精神病状態)が再び現れ易くなると考えられています。SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor - 選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬の場合は、これとは逆で、神経伝達物質のセロトニンの働きを薬で人工的に高めているわけですから、これに対抗して、人体はセロトニンの過剰な働きを抑え、薬を飲み始める前にあった自然なバランスや均衡を取り戻そうとして、セロトニンに対する反応性を減少させます。これがdownregulationです。そうなった時に、SSRIの服用を急にやめれば同じく離脱症状が現れ、抑うつも症状も再び強まるということになります。原理的には、麻薬に対する依存形成となんら変わる所はありません。
 

脳の委縮

 これは薬物依存や離脱症状の話ではありませんが、上記NHKのテキストには、アルコール依存症の人の興味ある脳画像の説明がありましたので、これについて若干述べておきます。リンクにあるテキストのpdfファイルの最後のページをご覧ください。脳のMRI画像があります。健常者の脳とアルコール依存症患者の脳の画像比較です。アルコール依存症患者の場合には、まだ若干25歳の若者ですが、脳の前頭葉と側脳室と呼ばれる部分が委縮しています。

 アメリカのアイオワ州立大学の精神科の教授であるナンシー・アンドリアセン(Nancy Andreasen)という研究者が、2011年に精神科分野の有力な学術誌であるJAMA Psychiatry (Journal of the American Medical Accociationの発行する学術誌の一つ)に興味深い論文を発表しています。

 http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=211084

 211名の統合失調症患者のMRIによる脳画像を調べて見ると、抗精神病薬を長期に渡って投与された患者では、前頭葉やその他の脳部位の灰白質や白質の体積の減少がみられた。抗精神病薬の服用期間が長ければ長い程、また服用量が多ければ多い程、脳体積の減少は大きかったという研究結果であったと論文は述べています。。

 論文著者のアンドりアセン教授は、既に2008年にアメリカの有力新聞であるニューヨーク・タイムズ紙の長いインタビュー記事の中で、抗精神病薬の服用が脳細胞の委縮につながるという事を世間に伝えています。他のアメリカのいくつかのメディアでもこれはニュースとして伝えられました。

http://www.madinamerica.com/2011/02
/%ef%bb%bfandreasen-drops-a-bombshell-antipsychotics-shrink-the-brain/


 アンドリアセン教授は1993年から2005年までAmerican Journal of Psychiatry (アメリカ精神医学会発行の学会誌)の編集長(Editor-in-Chief)を務めた人で、この論文の信憑性は高いと考えられます。

 翻って、日本のある精神科クリニックの精神科医が、脳の委縮問題について、これとは対照的な見解を論文に書いています。函館にある五稜郭メンタル・クリニックという診療所の多田直人という精神科医が書いた論文です。この論文の5.頭部CT検査所見による統合失調症の画像診断 1)大脳前頭葉の委縮(212頁以降の部分)という題の節で多田医師は「前頭葉の委縮を認めたならば、それは統合失調症と診断すべきである」と言っています。これは因果関係を逆転した、精神科医によく見られる誤った議論の典型例です。患者を統合失調症と診断したら、日本の精神科医はほぼ100%、患者に抗精神病薬を処方します。このメンタル・クリニックでCT画像をとってもらう統合失調症の患者は、ほぼ全員すでに抗精神病薬を服用しているのです。何か患者に有害症状が現れると、特に有害精神症状が現れると、その原因は患者の精神疾患にあると言い、すべて精神疾患のせいにして、薬の影響は度外視して勘定に入れません。読者の方々も、これから精神科医の話を聞いたり、書いたものを読む時に、このポイントを覚えておくと、彼らのインチキ・ロジックを見破れます。とにかく精神科医は薬の悪さ加減を認めたくないのです。薬を出せなくなったら、商売あがったりだからです。この論文のそれ以外の部分でも、多田医師の憶測と想像に基づいた議論を展開しています。、精神科では頻繁に見かける迷える論文の一つであって、一読に値しません。

 参考までにCTとMRIの違いを一言。CT(Computer Tomographyの略)は放射線を利用して人体の断層図を撮影するものです。放射線被爆があるので、欧米では、余り頻繁に検査で使うのは好ましくないとされています。一方MRI(Magnetic Resonance Imaging)は日本語では核磁気共鳴画像法と呼ばれていて、MRIでは放射線被爆はないのでより安全とされています。画像もCTよりMRIの方がより鮮明であり、CTでは見えないものが、MRIではよく見えるということもあります。機械の値段もCTと比べMRIの方がずっと高価です。

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